『業火の市』三部作レビュー|ドン・ウィンズロウ渾身の引退作、カタルシス確定のマフィア叙事詩

ドン・ウィンズロウ『業火の市』三部作(業火の市・陽炎の市・終の市)のレビュー記事アイキャッチ画像
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アイルランド系マフィアの熱い叙事詩を読んでみませんか?

相方さん

『業火の市』三部作
キタ━(゚∀゚)━!!

ドン・ウィンズロウが作家人生の幕を閉じた。その最後の作品が、この三部作です。

この作品が、わたしにとってのウィンズロウ作品との初めての出会い。
引退作が初読みとは!でも逆に、そこから入るのもアリでした笑
実は『業火の市』は2年ぶりの再読だったんですが、結末を知っているのに手が止まらない。これぞ面白さの証明!

業火の市ごうかのまち』『陽炎の市かげろうのまち』『終の市ついのまち——アイルランド系マフィアの男、ダニー・ライアンの半生を追った一代叙事詩。1986年、米東海岸ロードアイランドから始まる物語は、やがてカリフォルニア、ラスベガスへと舞台を広げていきます。三冊通して読むことに、確かな意味がある。これは断言できます!

スティーヴン・キングが絶賛した理由、読めばわかりますよ😆

目次

作品情報

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あらすじ

1986年、米東海岸の港町。 アイルランド系マフィアの男が、やがて国を揺るがす抗争へと巻き込まれていく。

平和な街に火種が生まれた。一人の男の軽率な行動が、長年保たれてきた均衡を一瞬で崩す。 渦中に立たされたのは、組織の中でくすぶり続けていた男、ダニー・ライアン。逃げ場のない状況で、彼はある決断を下す——

作品データ

作品データ詳細
タイトル業火の市/陽炎の市/終の市
難易度★★☆☆☆(登場人物は多いが、読ませる筆力で迷子にならない)
著者ドン・ウィンズロウ
テーマ/ジャンルクライム/マフィア/群像劇
主な実績NYタイムズベストセラー/TIME誌年間必読100冊選出
出版社ハーパーコリンズ・ジャパン

作者プロフィール

引用:ドン・ウィンズロウ公式X(@donwinslow)より

ドン・ウィンズロウ(Don Winslow)は、
1953年生まれのアメリカの小説家、クライムサスペンスの巨匠。アメリカ海軍下士官の父と図書館員の母のもとで育ち、ジャーナリスト、私立探偵、サファリガイド、映画のスクリプトドクターなど多彩な職業を経験しながら激動の半生を歩む。

1991年に『ストリート・キッズ』でデビュー。メキシコ麻薬戦争の凄惨な現実を描いた大作『犬の力』三部作や、警察の腐敗に切り込んだ『ザ・フォース』などで世界的ベストセラー作家としての地位を確立。2012年には『野蛮なやつら』がオリバー・ストーン監督により映画化された。

徹底的なリサーチに裏打ちされた圧倒的なリアリティと、無駄を削ぎ落とした映画的なタイトな文体で世界中のノワールファンを魅了し続けたが、本作『業火の市』三部作を最後に惜しまれつつ作家活動からの引退を表明した。

レビュー

『業火の市』:海から浮かぶ美女と、くすぶる男の「破滅へのカウントダウン」

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ダニー・ライアンは、海から浮かぶ女に釘付けになる。こんな美しい女は厄介事を起こす。これから起きる全てを知っていたら、今すぐ女の顔を水に突っ込み、動かなくなるまで押さえつけているだろう。だが彼はまだ知らない。

オープニングの巧みな文章。その引き込み方に身を任せ…

本作は、ギリシャ悲劇『イリアス』を現代のアイルランド系マフィアに置き換えた壮大な群像劇。 絶世の美女パムを巡って、ボスの末息子リアム(英国のバンド=オアシスのアイツ想い出す笑)が引き起こした気まぐれなトラブルが、長年保たれてきたイタリア系マフィアとの均衡を文字通り「業火」で焼き尽くしていきます。

その泥沼の中で、組織の下っ端で「くすぶっていた」ダニー・ライアンが、皮肉にも最悪の抗争の中で「頼れる男」へと覚醒していく。この立ち位置の変化と、街に生きる人々の生活描写の巧みさ。ドン・ウィンズロウの筆力のなせる技に唸らされます!

『陽炎の市』:逃亡の果て、ハリウッドの光と影に飲み込まれる「異邦人ダニー」

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第2部では、ロードアイランドのジメッとした硝煙から一転、カリフォルニア・サンディエゴの眩しすぎる陽光の下へ。

原題は『City of Dreams』。絶体絶命のピンチから始まるオープニングの仕掛けが、中盤の展開にずっと緊張感を持続させる構造は素晴らしく——

身を隠す逃亡劇のはずが、ダニーの手下「アルター・ボーイズ」が自分たちの抗争を描いたハリウッド映画の製作にちょっかいを出し始めるあたりから、一気にエンタメ度が加速します。アル中でダメなケヴィンとショーンの対比など、サブキャラの躍動感が抜群です。

そして前作では「下っ端」だったダニーが、今作ではなぜか急にハンサム設定になり(笑)、ハリウッド大女優とのゴシップな大恋愛を繰り広げる王子様に変貌を遂げます。母マデリーンの巨大な影、そして宿敵クリス・パルンボの暗躍——多層的な人間ドラマが、最終巻への伏線として静かに積み上がっていきます。

『終の市』:ラスベガスの帝王、そして宿命の輪廻(カルマ)へ

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※ここからは読了済みの方に向けた内容を含みます。

最終巻の舞台はラスベガス。マデリーンの資本があるとはいえ、元・漁師のチンピラだったダニーが天才的な才覚でカジノ王国を築き上げます(ちょっと有能すぎでは?という夢物語感もありますが、そこはエンタメとして読ませきる筆力が勝ります!)。

正直、カジノ進出のあたりは食傷気味になりかけましたが——後半からエンディングにかけての、「ダニー」「クリス・パルンボ」「ピーター・モレッティ・ジュニア」の視点が交互に激しく切り替わる怒涛のトリプル・ナラティブは圧巻の一言。後半は一気読み必至です。

ピーター・ジュニアの裁判を通して描かれるアメリカの司法制度への皮肉。証人保護プログラム、司法取引、弁護士と検察の駆け引き。「事実」を争うのではなく、「いかに陪審員を信じ込ませるかのゲーム」と化した陪審員制度の欠陥と罪深さ。こういったクライム作品の定番をダレさせずに読ませるのがマエストロの真骨頂ですよね?笑

一度は足を洗ったはずのダニーが、結局はしがらみから逃れられず、自らの手でケリをつけるマフィアな幕引き。そして物語は、彼の息子イアンのその後で静かに幕を下ろします。血の因縁の「継承」という叙事詩的な着地に、巨匠の作家人生最後の仕事としての矜持を感じました。

まとめ

  • 『業火の市』: 泥臭い東海岸マフィア映画の「閉塞感と焦土」
  • 『陽炎の市』: 西海岸ノワールの光と影が交錯する「ハリウッドの虚構」
  • 『終の市』: 巨万の富と引き換えに宿命へと回帰する「ラスベガスの栄枯盛衰」

第一巻『業火の市』から、一気通貫でこのダイナミズムを浴びてほしい。三部作のカタルシス、読了後の満足感は格別です!
ドン・ウィンズロウの引退作は、アメリカを横断する壮大で極上のマフィア叙事詩。他の作品も読んでみたくなる、巨匠の傑作にただただ脱帽です。みなさんもぜひ!

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相方さん

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